光造形の3Dプリンターは、FDM(熱溶解積層方式)の3Dプリンターと比較すると、圧倒的に積層痕が目立たず、綺麗なプリントが得られます。
でも、人は欲深いもので・・・
綺麗なプリントでも、あらを探して気にするもの。
最新4KのSATURN Sなんだから、もう少し綺麗になっても良いのでは?なんて思ってしまうのです。
今回は、積層痕が気になったら、試して欲しい露光時間の設定について、紹介します。
積層痕に影響する、露光時間の目安。
光造形3Dプリンター設定で変更すべきは主に2つ
変更項目 | 影響部位 | 目安 |
---|---|---|
露光時間(初期層以外) | 積層痕やプリントサイズに影響 | 1.5~3秒 |
初期層の露光時間 | ビルドフォームへの定着具合に影響 | 25~40秒 |
【露光】とは、光を当てることにより化学反応をする物質(ここではレジン)に、光(ここではUV光)を当てることです。
【露光時間】とは、光を当てる時間になります。
積層痕、実は露光しすぎ?
初期設定でプリントした積層痕
初期層以外の露光時間について、SATURN Sの取説には、1.5~3秒となっています。
ChituboxでSATURN Sを選択すると、最初に入っている値は【2.5秒】でした。
なので、あまり気にせず、【2.5秒】でプリントしていたのですが、プリントにやや積層痕が目立つ気がしていました。
こんな感じです。↓
露光しすぎると、プリント品が太る
一方で、露光しすぎると、プリント品が太ります。
今回まず気になったのは、組立て式の大型フィギュアを出力し、組立てようとしたとき、合わせ目のボスと穴が合わず、ちゃんと入らないという状態でした。
結局全部ボスを削って組立てましたが、これ、原因は露光しすぎで太っているのでは?という疑念でした。
そこで試しに、顔と髪の部分だけ、露光時間を【2.5秒】⇒【1.8秒】と短めにしてプリントしてみたところ・・・・
なんと、削らずにボスと穴が完璧にはまったのでした\(^_^)/
逆にちょっとゆるい感じ。(ちょっと時間が短すぎたかもです)
この時、さらに気づいたことは、
【積層痕】も大幅に減って綺麗になっているという事実!
というわけで、
試しに露光時間を【2.5秒】⇒【2秒】に変更して全部品を再プリントしてみました。
【0.5秒】の差は大きい
結果は、驚くべきことに、完璧でした!
ほぼ全ての部品が、ボスを削ること無く、組立てられました。
また、ブーツやマントの部分に目立っていた積層痕がほぼ無くなっています!
これこそ、4K品質!
たった【0.5秒】で、ここまでプリント品質に差が出るとは、本当に驚きです!!
露光時間は、短くしすぎると、露光不足になり、プリント途中でちぎれて失敗します。
このレジンをSATURN Sで使う場合、1.5秒では失敗しました。
【0.5秒】の差で起こっていること
組立てボスがはまらない件
図にすると分かりやすいのですが・・・
露光時間が長くなると、本来よりも余計に固まるので、本来の境界より外方向に膨らみます。
- ボスは太くなり・・・
- 穴は狭くなります。
つまり、ダブルで入りにくくなるわけです。
例えば、0.1mm分太ったとして、
角ボスの場合は、両側で0.2mm太り・・・
角穴の方は、両側で0.2mm狭くなる・・・
これでは、入らない訳です。
積層痕が目立つ件
積層痕については、膨らんだ方が境界がぼやけて、目立ちにくくなりそうですが・・・
まったく逆の現象でした。
ここは謎です・・・
条件おさらい
項目 | 条件・設定値 |
---|---|
プリンター | SATURN S |
レジン | ANYCUBIC 水洗いレジン 青(水色) |
積層ピッチ | 0.05mm |
露光時間(初期層以外) | 【2秒】 |
初期層露光時間 | 35秒 |
ビルドプラットフォーム | 取り外し式マグネットビルドプレート |
室温(12月~1月) | 7℃~12℃ 寒いです・・・ |
温度管理(レジン) | 開始直前までドライヤーで加熱し、レジン温度25~30℃ |
温度管理(プリンター本体) | プリンター外周を足元ヒーターで囲い、プリンター外周は35℃くらいで一定。 |
まとめ
今回は、光造形3DプリンターSATURN Sの露光時間に焦点をあてて、プリント品質の違いについて、紹介しました。
まとめると、積層痕が気になったら、
初期層以外の露光時間を【0.5秒】短く設定してみる。
たった【0.5秒】でプリント品質が大きく変わるので、ぜひ試して見て欲しいです。
※1.5秒まで短くすると、露光不足で途中でちぎれて失敗しました。
レジンの種類やメーカー、プリンターの種類によって、値は変わるので、試す必要はありますが、逆に言うと、注意すべきは、
- 初期層以外の露光時間(短くすると、積層痕が目立たなくなる)
- 初期層の露光時間(長くするとプラットフォームへの定着が増す)
の2つだけなので、条件だしは簡単ですね。
これだけで、4K品質が楽しめるのはすごいことです。
今後は別のレジンなども試してみますので、お楽しみに!